正義のヒーローがあらわれた日のこと

とある高校生時代の一日。

私は最寄りの駅より、当時通っていた高校に通学途中でした。

「あ~ 今日は火曜日か~。まだ休みまで4日もあるよ~。今日は体育もないし退屈な日だな😢」

いつも見慣れた景色を窓越しに眺め、気分はとてもブルー。

朝9:00に始業ということもあり、7:30のラッシュアワーの電車に毎朝乗らなければならなかったため、電車内はいつもすし詰め状態で、身動きがとれないレベルでした。

その日、私はドアのすぐ近くの手すりの前に陣取り、授業テキストなどの入ってリュックサックを足元に置いていました。

リュックサックの中には、教材や弁当を入れて通学していたため、重くて、満員電車内での置き場に困っておりました。

乗車してから20分ほどたったころ、毎朝多くの人が乗り降りする駅に到着しました。

(ご乗車の方は、押し合わずご乗車ください~)

駅のアナウンスがながれ、いつものように多くの通勤客が電車に乗り込んできました。

 

私は手すりと座席の隙間に身をゆだね、乗ってくる人をかわしておりました。

(ドアが閉まります。ご注意ください。)

「ここからいつもの正念場だ。耐えろ耐えろ。」

窮屈でしたが、その駅から15分ほどすればまた多くの人が降りるので、

何とか毎朝通学できていました。

しかし人間気分がブルーなときほど、厄介ごとに巻き込まれるというのは本当なのでしょうか。

その日は違ったのです。

次の停車駅でドアが開き、数人が降りていき、私の隣には少々スペースができました。

「今日はそんなに混まないのかも!」

そう思った矢先、ひとりの男性が隣に来て、

「そんなにおっきな荷物足元に置いてんじゃないよ! 乗ってくる人が転んだらどうすんの!背負え!」

と急に私のリュックサック持ち上げ、取り上げてきたのです。

私は、唐突の出来事に、「すみません。」と謝ることしかできずにいました。

しかし、そんな私を見て、男性は弱みに漬け込んだかのように文句をまくしたててきました。

すると、後ろの方から、

「それはあんまりじゃないの~! あんたが間違ってるよ! 満員でリュックサック背負う方が危ないだろ!」

と助けてくれた人がいたのです。

電車が動き出してから、しんみりとした車内をつんざくような声だったので、正直私は驚いておりました。

文句を言いつけてきた男性も、はじめは何度か首をかしげながら反論していたのですが、

助けてくれた方の威勢と周りの重い空気に圧倒されたのか、おとなしくなりました。

助けてくれた方は、その次の駅ですぐに降車してしまったのですが、私は何度も心の中で、「ありがとうございました」と連呼していました。

 

最近、公衆の場では、他人がトラブルに巻き込まれていても見て見ぬふりをする人が多いです。

私もどちらかというと見て見ぬふりをする部類に入ってしまうかもしれません。

そんな中、口論になる危険を顧みず、弱い私を助けてくれたその方は、今も私の正義のヒーローであり続けています。